甘い香りにご用心!痺れる魅力の毒ガス怪人「マッドガッサー」【都市伝説解説】

甘い香りって魅力的ですよね。
お菓子はもちろん、いい匂いのハンドクリームなんかも、嗅ぐとそれだけでちょっぴり幸せな気持ちになっちゃいます。

でも気をつけてください。
その匂いの発生源は、狂気の毒ガス怪人「マッドガッサー」かもしれませんから。

どくみつき

小学生のころにやった火災体験の煙がチョコレートの香りだったんだけど、あれはまさか……!

つぐみ

消防署の職員さんだから安心しな

目次

毒ガスを使う怪人、「マッドガッサー」とは

マッドガッサーは、1933年ごろと1944年ごろにアメリカで出没したといわれる、毒ガスを撒き散らす怪人です。
1933年にはバージニア州ボテトート群、1944年にはイリノイ州マトゥーン市にて、有毒ガスや薬剤を使用した複数の事件を引き起こしました。
マトゥーン市での事件が有名なことから「マトゥーンの狂気の毒ガス犯」の異名を持ちます。

毒ガスや薬剤を使って人々を襲ったという共通点があるため、各事件の犯人はマッドガッサーとされていますが、事件現場の目撃情報では「筋肉質の男が逃げるのを見た」「女性ものの靴跡があった」「黒ずくめの背の高い男がいた」「男装した小柄で太った女を見た」など、ちぐはぐな証言がされています。

単独犯なのか複数犯なのか、はたまた人ならざるものなのか。
そもそもマッドガッサーなんて人物はいなかったのではないか。

マッドガッサーは、そんな噂が飛び交う謎多き怪人なのです。

どくみつき

不謹慎だけど、名前に「どく」が入っている身としては毒ガス怪人にロマンを感じざるを得ない

つぐみ

どくみさんってゲームだと、毒状態とか麻痺状態にする攻撃をよく使うもんね

迫りくる怪人の恐怖。マッドガッサー事件の例

マッドガッサーの暗躍が噂される事件は多岐にわたり、中には模倣犯と思われるお粗末な事件も散見されたようです。
全ては紹介できないので、今回はいくつかの事件や不審者情報を掻い摘んでご紹介します。

1933~1934年 バージニア州ボテトート群

1933年12月22日

ヘイマーカータウンに住むハフマン一家が、何者かによって、窓の隙間から甘い香りのガスを注ぎ込まれるという攻撃を受けました。
19歳の娘はガスの吸引による意識不明になり、懸命な人工呼吸によって蘇生したものの、数週間は激しい麻痺の被害を受けることになります。
兄弟や両親も被害を受けており、吐き気や頭痛、喉の圧迫感などに悩まされました。

ハフマン一家への襲撃は3度に分けて行われ、3度目の攻撃の際に「筋肉質の人影」が目撃されます。
現場検証の結果、ハフマンさんの家からは催涙ガスとクロロホルムらしい成分が発見され、窓の付近には「女性ものの靴跡」が発見されました。

つぐみ

筋肉質で女性ものの靴を履いた人物……。矛盾してるわけじゃないけど、ちょっと違和感があるね

1933年12月24日

楽しい楽しいクリスマス・イブでも、怪人は出現します。

ヘイマーカータウンと近隣にある町、クォーバーデールでも同様の事件が発生しました。
礼拝を終えたホール一家が自宅に帰ると、家中に甘い匂いが充満しており、彼らはハフマン一家を襲ったのと同様の症状を発症してしまいます。
そして家の周辺には、女性ものの不審な靴跡が見られたそうです。

どくみつき

ここから犯人は「マッドガッサー」と名付けられ、近隣住民を恐怖に陥れることになります

1934年2月9日

被害を受けた家の窓辺に、変色している雪が発見されます。
雪には甘い匂いのする物質が付着しており、警察が分析した結果、ヒ素と硫黄が検出されました。
また、例のごとく女性ものの靴跡も発見されたようです。

つぐみ

当時の住民たちは、各々が武装して警戒していたみたいですね

どくみつき

「毒ガスによる襲撃」と「女性の靴跡」を共通する事件は、約2ヵ月の間ボテトートを襲い続けましたが、忽然と終わりを迎えました

1944年 イリノイ州マトゥーン市

1944年9月1日

約10年の時を経て、怪人は再び動き出します。

午後11時を過ぎたころ、イリノイ州マトゥーンに住むアーリーン・カーニーさんは、眠っていたところを娘の咳によって起こされました。
娘の病気を疑ったのも束の間、強烈な甘い匂いに包まれていることに気がつきます。
そして、吐き気と下半身の麻痺、口元の痛みに襲われ、パニックになりながら大声で助けを呼びました。
幸い自宅には妹がいたので警察を呼んでもらうことができ、カーニーさんは一命を取り留めます。

一方、午前12時過ぎに仕事から帰ってきた夫のバート・カーニーさんは、ベッドルームの窓を怪しい男が覗いている姿を目撃しました。
バートさんは慌てて追いかけましたが、男は足が速かったようで、取り逃がしてしまいます。

どくみつき

不審者は「黒ずくめの服を着た瘦身瘦躯の男で、ぴったりとした帽子を被っていた」そうです

1944年9月5日

ビューラ・コルデスという女性が帰宅したところ、玄関先に白い布が落ちていることに気がつきました。
拾ってみるとそれは濡れており、ためしに嗅ぐと電気が駆け巡るような衝撃が彼女を襲います。

コルデスさんはその場で嘔吐し、強い痺れに侵されました。
さらに口と喉は焼けるように痛み、顔は火傷を負ったように腫れあがったと証言しています。

つぐみ

症状は2時間程度で収まったようですが、想像すると中々に恐ろしいですね

どくみつき

しかし分析の結果、布からは彼女に起きた症状を引き起こす成分は発見されなかったんだとか

現場付近には使い込まれた口紅とスケルトン・キーが落ちており、証拠品として回収されましたが、事件との関連は不明のようです。

つぐみ

ちなみにスケルトン・キーとは、ウォード錠(鍵の形状に合わせた障害物が内部にあるシンプルな錠前)を解錠できる万能キーのことです

1944年9月8日

9月6日時点にはFBIが捜査を開始したものの、怪人の凶行は止まる気配がありませんでした。

9月8日には、小学校の校長であるフランシス・スミスさんとその妹が、1日に3度もマッドガッサーの襲撃を受けることとなります。
彼女たちの証言によると、「部屋中が青い霧のようなガスで充満し、外からは”ブンブン”という妙な音が聞こえた」のだそうです。

1944年9月13日

州警察やFBIは捜査の末、容疑者として”ある男性”の身柄を拘束しますが、それでも事件は収束しませんでした。

しかし9月13日、「男物の服を着た、小柄で太った女」が女性を襲撃したのを最後に、マッドガッサーは現れなくなります。
これが、最後のマッドガッサー事件となりました。

どくみつき

被害数は多いですが、いずれも死者は出ていないそうです

つぐみ

ちなみに、マトゥーンで最初の事件と思われていた9月1日の数ヵ月前にも、実は似たような毒ガス被害があったんですって

怪人マッドガッサー。その正体は何者か

集団ヒステリー説

不可思議な未解決事件の真相としてお馴染みの説。

どくみつき

集団ヒステリーとは簡単にいうと、「一人が発症したパニック障害やヒステリーが他者に連鎖し、集団内の多数が同様の症状を引き起こす現象」のことです

つぐみ

「セイラムの魔女裁判」や「踊りペスト」、「コックリさん」などなど……。オカルト系の話題でよく聞く言葉だね

二度目のマッドガッサー事件が起こった1944年は、第二次世界大戦の真っ只中。
当時は非常に世界情勢が不安定で、誰もかれもが大きな不安を抱えて生きている時代でした。
強烈なストレス下で表れた体調不良と被害妄想こそが、マッドガッサーの正体だとする説です。

多数の被害が報告されたわりに死者はおらず、ほとんどの事件では物的証拠が得られなかったことから有力な説の一つとされています。
マッドガッサー事件の被害者の多くが、集団ヒステリーを発症しやすいとされている女性なのも、この説を後押ししているのかもしれません。

とはいえ、一部の事件では実際に不可解な薬品が検出されているので、すべてを集団ヒステリーで片付けるのは難しいでしょう。

工場から漏れでた有害物質説

アトラス・インペリアル社から漏れ出した有害物質を正体とする説。

ディーゼルエンジンの製造を行っていたアトラス・インペリアル社の工場には、事件被害者たちが訴える不調を引き起こす化学物質が保管されていました。
そのため、工場による公害がマッドガッサーの正体ではないかと考えられたわけです。

しかし、従業員や近隣地域からは被害の報告がなかったことや、工場内にある化学物質の在庫はマッドガッサー被害を起こすほどなかったことから、この説はほとんど否定されています。

悲劇の容疑者、ファーリー・ルウェリン説

マトゥーンでの事例を紹介した際に少しだけ触れた、拘束された「ある男性」をマッドガッサーの正体とする説。

その男性は名を「ファーリー・ルウェリン」といい、イリノイ大学で化学を専攻していた優秀な学生でした。
実家はマトゥーンの食料品店で、両親のほかに姉が二人います。

彼は元来、明るく優秀な青年だったそうなのですが、大学を卒業して実家に帰ったころにはアルコール依存症を患っていました。
恐らくですがこれは、彼が同性愛者であったことと、特定の性行為(主に男性間)を禁止して罰する「ソドミー法」という法律があったことが関係していると想像できます。

心身ともに健康を害していた彼は、実家の店の裏に研究室を作りました。
そこでなにやら研究に没頭していたようですが、マッドガッサー事件の数日前に爆発事故を起こしています。
ファーリーは頑なに実験の内容を明らかにしませんでしたが、マッドガッサー事件を調べていたスコット・マルナさんは、ファーリーが作っていたのは「テトラクロロエタン(四塩化アセチレン)」だと推測しています。

テトラクロロエタンはクロロホルム臭のする薬品で、吸入すると頭痛や吐き気、意識喪失などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ります。
また吸入のみならず、皮膚からも吸収されるので触れるのも危険です。

物的証拠はありませんが、賢くも世間を恨んでいたファーリーがマッドガッサーとして世間に復讐したというのは、荒唐無稽な話ではないでしょう。

どくみつき

ファーリーは容疑者として拘束されたのち、ポリグラフテスト(俗にいう噓発見器)をパスして疑いを晴らしたものの、余生を精神病院で過ごすこととなったそうです。彼がマッドガッサーなのかはさておき、気の毒ですね

つぐみ

最後に目撃されたマッドガッサーは「小柄で太った女」でしたが、これは彼の姉の特徴と一致します。アリバイ作りに協力したのでしょうか

狂人&集団ヒステリー複合説

説というより現実的な落としどころ。
誰かしらマッドガッサーのオリジナルとなる犯罪者がいて起爆剤となり、戦争やテロに対する恐怖心が集団ヒステリーを引き起こしたという仮説。
模倣犯も存在したため、「マッドガッサー」なる怪人は、存在しないとも複数存在するともいえるでしょう。

その他

それ以外の説だと、時代背景を考慮した「ナチス・ドイツの工作員説」や「アメリカ軍の人体実験説」、根拠不明な「異星人説」や「スカンクエイプ(悪臭を放つUMA)説」などが挙げられます。

つぐみ

前半はともかく、後半はもう正体として考察する意味がないのでは……

おわり

ここまで、怪人マッドガッサーについて紹介してきました。

正体はおろか実在も怪しいため、未解決事件とも怪人ともUMAとも分類しがたい都市伝説「マッドガッサー」。
推し都市伝説なので、お気に召しましたら幸いです。

つぐみ

どくみさん的にマッドガッサーの正体は何が有力?

どくみつき

マッドガッサーはマッドガッサーだよ。毒を撒き散らす、どくタイプの怪人。だから痺れるのさ

それではまた。

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この記事を書いた人

オカルトを好むWEBライター。鳥類型怪人になるのが夢。

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