雨季の強い味方?人形呪術としての「てるてる坊主」

不安定な天気が続くこの頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
毎年恒例とはいえ、この時期はなにかと予定が台無しになることも多いと存じます。
そこで皆さまにお勧めしたいのが「てるてる坊主」です!

……え?そんな子供騙しのおまじないは信用ならない?
まあそう言わず一読願いますよ。案外面白い話が聞けるかもしれませんよ。

目次

てるてる坊主は人形呪術の一種

てるてる坊主は皆さんにとって馴染み深い存在かと思います。誰しも小さい頃、晴れを願うおまじないとして一度は作ったことがあるでしょう。

しかし改めて定義すると、てるてる坊主は「人形呪術」の一種であると言えます。人形呪術とはその名の通り、人形(ヒトガタ)を使用した呪いのことです。
有名どころでは藁人形を相手の分身として使用する丑の刻参りや、自分についた穢れなどを形代に移して身代わりにするなどが挙げられます。
古い話ですと、縄文時代に作られていた土偶も厄払いに使われていたという説があるそうです。

こう言われると少しは効果がありそうに感じませんか?

意外と知らない?てるてる坊主の作法

誰しも一度は吊るしたことのあるてるてる坊主ですが、正しい作法を知っていますか?
おまじないと言っても立派な呪術!正しい手順で行って効力を高めましょう!

てるてる坊主を使った晴れ乞いの手順

①作るタイミングは晴れてほしい日の前日です。
作り方自体に決まったやり方はありません。二枚の布を用意して一枚を丸め、もう一枚で包み込んでから紐などで首を巻いて頭を作ります。

布に指定はなくティッシュなどでも代用可能ですが、黒い布を使ってしまうと雨を呼ぶ「ふれふれ坊主」になってしまうので避けましょう。

それとこの時点で顔を描いてしまうのはNGです。雨や湿気で顔が滲んでしまうと、やはりふれふれ坊主になってしまうからです。

②完成したら南の方角に吊るしましょう。日本は北半球にあるため南側を太陽が通過するので、てるてる坊主に長くお日様が見える位置にいてもらうためです。といっても間取りの関係で南側に日があたらない場合は、素直に窓辺に吊るしましょう。

このとき注意が必要なのが、逆さまに吊るさないこと。やっぱりこれもふれふれ坊主になってしまいます。上手く吊るせない場合は首に巻いた紐でそのまま吊るすのではなく、頭頂部から紐を通して真っすぐに吊るしましょう。

どくみつき

てるてる坊主を吊るす場所は南天の木もおすすめです

つぐみ

南天は「難を転じる」と掛けて、厄除けの力を持つ縁起物とされる木なんだってね

③てるてる坊主を吊るす期間は晴れてほしい日とその前日の2日間。晴れたか晴れなかったかでその後の処遇を決めましょう。
晴れた場合は顔を描き入れ、川に流すが神社でお焚き上げしてもらい供養します。

……と言いたいところですが、現代では中々難しいのも事実。大人の立会いのもと燃やすか、汚れないよう包んでから燃えるゴミに出しましょう。きちんと感謝を込めて供養する気持ちが大切です。

雨が降った場合には顔を描かず、そのまま処分しましょう。

呪物を甘く見ることなかれ。効果を高める方法と注意事項

ここまではてるてる坊主を使った晴れ乞いの基本的な手順を説明しましたが、さらに効果を高める方法があります。
それは「童謡を歌う」ということです。

てるてる坊主 てる坊主 あした天気に しておくれ
いつかの夢の 空のよに 晴れたら金の鈴あげよ

てるてる坊主 てる坊主 あした天気に しておくれ
私の願いを 聞いたなら あまいお酒を たんと飲ましょ

てるてる坊主 てる坊主 あした天気に しておくれ
それでも曇って 泣いたなら そなたの首を チョンと切るぞ

童謡『てるてる坊主』
作詞:浅原鏡村 作曲:中山晋平

上記は小説家の浅原鏡村(浅原六朗)氏が作詞したものです。単なる創作であるか作法として正しいものであるかは不明ですが、これをてるてる坊主に向かって歌うと呪言に成り得ます。

と言うのも、この歌では「金の鈴あげよ」「あまいお酒をたんと飲ましょ」で願いが成就した際の報酬を提示しており、「そなたの首をチョンと切るぞ」は失敗した際の懲罰を明示しています。
つまりこれは、「ヒトならざるモノ」との契約を歌っていると言えるわけです。

言葉は呪力を持つため、この童謡を口に出して唱えることで”契約”が発生します。そうなれば効果には期待できますが、正しく報酬を与えないとてるてる坊主は祟る存在へと転じてしまいます。
童謡を歌う際は、きちんと報酬を用意しましょう。

つぐみ

報酬は用意しやすいもので代用してもいいかもね。「黒い飴あげよ」とか「濡れた煎餅たんと食わしょ」とか

どくみつき

もしかして雨乞いしようとしてる?

てるてる坊主の由来① 龍王に見初められた少女。掃晴娘

ところで、てるてる坊主の起源についてはご存知ですか?実は中国の「掃晴娘(さおちんにゃん/そうせいじょう)」という、箒を持った女の子を模した人形が由来なんだそうです。

掃晴娘の伝説

むかしむかし、中国で大雨が降り続くことによる水害が起こりました。
そこで晴娘という少女が雨が止むよう天に祈ったところ、「東海龍王の妃になれば雨を止ませる」という声が聞こえてきたのです。
晴娘がそれに承諾すると雨は止みましたが、その後晴娘の姿は消えてしまったそうです。
以降人々は雨が続くと、切り紙で作った掃晴娘の人形を門にかけて晴れを祈るようになったんだとか。
いわゆる人身御供のお話ですね。

でもなんで箒を持っているの?

ここまで読んで、「”掃”はどこから来たの?なんで箒を持ってるの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
これは箒で「雲を払う」ためや「晴れを掃き寄せる」ため付与されたものだと言われています。
箒はその「払う」や「集める」といった道具としての機能から、神の依り代として扱われていることにも由来しているのでしょう。

坊主になった理由

もう一つの疑問として、「女の子からなんで坊主になったの?」と思う方もいるかもしれません。これは掃晴娘の話が日本に伝来した後、別の昔話と混じり合ったことによるものと思われます。

むかしむかし、雨が続いて困った殿様がお坊さんに雨を止ますように依頼しました。
お坊さんはお願いに応えようと、お経を読んでお祈りしてみましたが一向に晴れる気配はありません。
殿様は怒ってお坊さんの首を刎ねて、その頭を白い布で包んで軒先に飾ったら翌日見事に晴れたんだとか。

なんとも理不尽な話ですが、それだけ天気が重要視されていた時代なのかもしれませんね。

つぐみ

ボクがお坊さんだったら向こう1,000年は祟るかな

どくみつき

掃晴娘のときみたいに大水害があって仕方なかったのかも……?

てるてる坊主の由来② 日和坊

実はてるてる坊主の由来にはもう一つ、常陸国(現在の茨城県)に現れる「日和坊」という妖怪を祀っているものという説もあります。

鳥山石燕 著『今昔画図続百鬼』より「日和坊」
鳥山石燕 著『今昔画図続百鬼』より「日和坊」

日和坊は晴れを司る妖怪とされており、鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』では

常州の深山にあるよし
雨天の節は影見えず、日和なれば形あらはるゝと云
今婦人女子てるてる法師というものを紙にてつくりて晴をいのるは、この霊を奉れるにや

『今昔画図続百鬼』鳥山石燕 著

と説明されています。

平易な言葉に直すと、「こいつは常陸国の山で晴れの日にだけ現れる。女性や子供が紙で法師をかたどって晴れを願うのは、この妖怪を祀っているからだ」といった内容です。

この説は鳥山石燕が言っているだけなので根拠が少し弱く感じられますが、西日本の一部地域ではてるてる坊主を「日和坊主」と呼ぶそうなのであながち間違いではないのかもしれませんね。

終わりに

今回はてるてる坊主を呪術的な観点から見た話や、成り立ちについての話をまとめてみました。

子供のころ以来てるてる坊主を作っていない方も多いかと思います。これを機に童心にかえって吊るしてはいかがでしょうか。
お子さんがいる方は一緒に作る際に話のタネにしてみてもいいかもしれませんよ。

どくみつき

それでは晴れを願って良い一日をお過ごしください

つぐみ

でも雨も大事だから適度にね

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この記事を書いた人

オカルトと駄洒落を好むオタク。好きな変身アイテムはガイアメモリです。

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