突然ですが、あなたは妖怪がお好きでしょうか?
……なんてことはあなたがこの記事を開いた時点で聞く必要はないでしょう。
では妖怪の知識については自信がおありでしょうか?
実は妖怪の知識を測り、公式に「妖怪博士」と認める検定が存在します。
その名も、「境港妖怪検定」です。
私事ですがこの度、「第17回 境港妖怪検定(2024年10月6日実施)」の初級と中級を受験してきたので、紹介を兼ねて受験の感想を残そうかと思います。
あなたが妖怪博士を目指すきっかけになれば幸いです。
僕が実際にした勉強法や苦労した点などは、次回の【合格発表・勉強法 編】で書こうと思います
ちなみに試験に関する情報のお漏らしは厳禁なので、今回はあくまで検定の紹介や感想の話が主になります。ご了承を
境港妖怪検定とは
妖怪の権威・水木しげる先生の妖怪考察を通じて学んだ、日本各地に伝わる妖怪や伝承についての知識を、「資格」として公式に認定する検定試験です。
https://youkai-kentei.com/about/ (境港妖怪検定HP 「境港妖怪検定とは」より)
境港妖怪検定はその名の通り、妖怪に対する知識を測ることで、「妖怪博士」として公式に認定するご当地検定です。
一見お遊びの検定にしか思えませんが、合格率は初級で74.6%、中級で21.9%、上級はなんと8.9%と、意外にも遊びの無い難易度をしています。(第1~16回の平均データより)
もちろん公式の検定ですので、履歴書に書くこともできますよ。
まあ妖怪と履歴書の食い合わせはだいぶ悪いですがね
おばけにゃかい~しゃも~
しごともなんにもない!
開催場所は鳥取市境港市と東京都調布市で、どちらも妖怪の権威こと水木しげる先生に縁の深い地となっています(上級は境港市のみ)。
今回僕が初受験した初級と中級は受験資格を問われませんが、上級は中級合格者のみ受験が可能です。
「ゲゲゲの鬼太郎」や「河童の三平」といった、妖怪漫画で有名な水木しげる先生の考察を通じて妖怪の知識を測る検定ですが、問われる知識は伝承や絵巻などを基とした本格的なもの。
水木先生のオリジナル妖怪などが一切登場しないのはもちろん、陰摩羅鬼が死体を蘇らせたり百々爺が鼻毛を飛ばすといったような漫画アレンジされた設定もありません。漫画家の水木先生ではなく、妖怪蒐集家としての水木先生に学ぶ必要があります。
妖怪検定に挑んだ感想
試験勉強をしての一番の収穫は、自分がいかに井の中の蛙であるかを知れたことでしょうか。
というのも、こんなブログを始めるくらいなのだからそこそこ妖怪の知識には自信があったのですが、いざ勉強をしてみると聞いたこともないような妖怪がわんさか出てきます。
初級のテキストである「水木しげるロード全妖怪図鑑」は、110体ちょっと(神様含む)しか載っていないので殆どが知っている妖怪だったのですが、中級テキストの「決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様」では、p26からp775に至るまで1ページに1体ずつ妖怪(幽霊や呪法含む)が紹介されています1。
なので知らない妖怪が大半ですし、詳しく書かれているため知っているはずの妖怪でも把握できていない情報がごまんと出てきます。
今回は短期間で暗記しようと躍起になって読んでいたため、あまりの分量に何度か挫けそうになることもありましたが、知らない妖怪たちを知るいい機会になりました。
暗記のためじゃなく、読み物として読めば非常に面白い本ですよ
試験勉強としての苦労話は次回、【合格発表・勉強法 編】にて勉強の記録と共に書こうかと思います。
長くなっちゃうし、まだ結果出てないのに下手なこと言えないので
その他に思ったのは、水木しげる先生の意外なスタンスについてです。
僕は今まで、水木先生は妖怪の存在について全肯定なのかと思っていました。
水木先生が「ぬりかべ」や「べとべとさん」といった妖怪たちと実際に遭遇したという話は有名ですし、妖怪の存在を否定した井上円了への不満を持っていたのを知っていたからです。
しかし「決定版 日本妖怪大全」を読んでいると、決して妖怪の存在について妄信的ではないことが伺えます。
例えば、夜な夜な行灯の油(魚油)を舐める「油赤子」を猫ではないかと考察したり、ゴイサギが光る「青鷺火(五位の光)」は白い羽毛が月夜に光って見える現象だという説を唱えたりしていました。
このフラットな視点こそ、妖怪と真摯に向き合ってきた証拠なのかもしれません。
男性を嘗めまわす「嘗女」にいたっては変態呼ばわりでした
不思議なものをキャラクター化したのが妖怪だからね。変わり者もまた妖怪なのかも
受験の簡易レポ
冒頭でも記載しました通り、試験の具体的な内容については漏洩が禁止されているので控えさせていただきますが、実際に試験を受けたときの話も少ししておこうかと思います。
僕は神奈川県民なので、試験は「調布市市民プラザあくろす(東京都調布市国領町 2-5-15 コクティー3階)」で受けました。
エレベーターで上がると目の前に案内があるので、受験票を頼りに会場に向かいます。会場や席は受験番号によって決まっているので、間違えないようにしましょう。
着くとスタッフの方たちが鬼太郎ちゃんちゃんこ(商品名)を着ていて羨ましかったです
あれ結構高いもんねぇ……(約4~5千円)
初級の会場へ行くと、席には調布市と境港市の観光パンフレットが用意してありました。試験前はテキストを読んでいる受験者が殆どでしたが、余裕のある方はパンフレットを見て試験後の観光ルートを決めてもいいかもしれませんね。僕は余裕じゃないので家でじっくり読みましたが。
僕が受験をしたのは20~30人用の小さな部屋だったのですが、それでも年配の方から小さなお子さんまで、老若男女が入り混じっていました。
僕の隣にはガチガチに緊張した小学生の男の子が座っていました。初めて他人の合格を祈りましたよ
13時になるとスタッフの方から注意事項の説明があり、10分後に試験開始です。
試験内容に関しては割愛しますが、初級は合格率の平均が74.5%(第1~16回)程度の難易度なこともあり、しっかりとテキストを読みこんでいれば合格自体はそこまで難しくはないと思います。
試験時間は50分ですが、開始30分から途中退出ができます。有り難いことに中級受験者の控え室を用意してくれているので、中級を併願している方は早々に退出して次の試験に備えるのもありかと思います。僕はそうしました。
控え室で復習したあとは中級の会場に向かいます。初級のときとは違い、大きなホールでした。
最前列の席だったため全体の把握は出来ていませんが。難易度が高いためか、殆どが大人だったように思います。
例のごとく試験内容については割愛しますが、やはり中級は合格率の平均が21.9%(第1~16回)なだけあって一筋縄ではいかない難易度でした。
試験問題の作り自体は初級と大きく変わらないのですが、なにせ出題範囲や内容の詳しさが段違いなので、何となく覚えているだけでは通用しません。基本的には簡単な特徴をもとに、名前や詳細な特徴、出現地域、記された書物といった情報を問われます。
出題する妖怪数は範囲に対して非常に少ないので、ヤマを張るのはお勧めしません。テキストにある全ての妖怪を把握するのが最低条件といっていいでしょう。
公式HPにサンプル問題があるので、気になる人は見てみてください
そんなこんなで苦戦しつつも、初の妖怪検定は無事終了。試験終わりすぐにテキストの確認を行いましたが、悪くない出来かと思います。というかダメそうならこの記事は書いてません。
結果発表は試験から1ヵ月後の11月6日(水)にネットで発表されるそうです。そのときはまた記事を書きますので、よければ見てくれると嬉しいです。
おわりに
体験を交えながら境港妖怪検定について紹介してみましたが、興味を持っていただけたでしょうか?
妖怪が好きな方や妖怪に詳しくなりたい方は、ぜひ試しに受けてみてください。実用的な検定とは言い難いですが、だからこそ楽しく勉強できるんじゃないかと僕は思います。
開催場所が鳥取県境港市と東京都調布市しかないので参加が難しい方も多いかと思いますが、どちらも妖怪好きな方にはたまらない町ですので、観光旅行に組み込んで受験してみてもいいかもしれませんね。
まあボクら境港には行ったことないですけどね
それではまた、【合格発表・勉強法 編】でお会いしましょう
おまけ。ゲゲゲギャラリー
余談ですが、せっかく調布市まで出向いてきたので、調布市文化会館たづくり1Fにある「ゲゲゲギャラリー」を見てきました。
ゲゲゲギャラリーはイラストなど、水木先生の作品を紹介している展示です。
嬉しいことに入場は無料で、たづくり開館中はいつでも見ることができます。
展示内容は定期的に替わるようで、2024年6月6日~11月10日の期間では「水木しげるの青年期~出征~」と題した展示がされています。
太平洋戦争時代の体験を描いたもので、「2,3年以内に死ぬ予感があったので哲学書や宗教書に没頭した」「負傷した左腕を軍医に七徳ナイフで切断された」「遺骨を作るために生きている仲間の指を切り落とした」など、壮絶な体験が記録されていました。
軽い気持ちで見に行ったら結構ショッキングな内容……。戦争は本当に嫌ですね
これだけの体験を経ての、「戦争はいかんです。腹が減るだけです」は味わい深すぎる
その他、アニメ1~5期のフィギュアや水木先生の手形も飾ってありました。
11月22日~12月1日開催のゲゲゲ忌の時期には展示が替わっている筈ですので、また次回来るのが楽しみです。
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- 「決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様」は全923頁ですが、出題範囲は「妖怪」のみ。 ↩︎
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